バロック時代の作品における、ピアノ演奏でのアーティキュレーション
札幌市南区芸術の森・石山東地区で、スタインウェイピアノ教室を主宰する、西岡裕美子です。
前回のブログでは、「バッハ演奏ハンドブック(yamaha music media)」から、私が学生時代に感じた疑問を解消するような知識を共有しました。
おもに、「平均律クラヴィーア曲集」に関わる疑問をまとめてみました。
今回は、さらに踏み込んで、アーティキュレーションについて共有したいと思います。
とはいっても、ここに書いたことはほんの一部です。
詳しく知りたい方は、ぜひ本を購入して読んで下さればと思います。
それでは、軽い感じではございますが、どうぞご覧ください。
目次
バッハの時代の楽器と現在の楽器の違い
現在のピアノで、バッハの作品を弾くとき、現在の感覚で演奏すると、どうなるか?
本の中で書かれていることをまとめると、つまり、それはバッハではない、ということです。
同じ鍵盤楽器でも、チェンバロとピアノで違うところがありすぎるからです。
グランドピアノ・・・高音がよく響く
チェンバロ・・・低音が良く響く
現在の音楽は、ポップスに代表されるように、メロディーと伴奏が分かれている(和声音楽的な)ため、高音が良く響く現在のピアノが心地よいです。
しかし、バッハの時代は、メロディー同士が重なり合う(多声音楽の)ため、チェンバロが合うのです。そもそも、チェンバロが多声音楽のために作られた楽器です。
だから、高音を響かせたり、ある声部を際立たせたりするのは、そもそもチェンバロではそう弾かない、ということです。
強弱をつけることも、現在のピアノと比べてみるとさほどできないことから、強弱で音楽の表現をすることが難しいということになります。
朗読を理解するとバロックが分かる?
朗読と言っても、ギリシャ語です(笑)
ギリシャ文化の美的感覚に影響を受けているようです。
バロックの表現方法は、ポイントが2つあり、「語る」「踊る」だそうです。
その「語る」についてですが、ギリシャ劇の詩のリズムというものが、音楽に影響を持っています。
「詩脚」(ギリシャ語のリズムと響き)の響きの数が、基本が2~4となります。長い数にならないというわけです。
長い響きと短い響きが組み合わさって詩脚となりますが、これがモチーフとなって音楽の中に現れます。
この、リズムを表現するためには、長い響きと短い響きが分かるように演奏する必要があります。
よって、レガートでそろえたり、スタッカートでそろえたりする演奏では、「語り」になりませんから、アーティキュレーションが大切ということになるのですね。
「踊る」ことに関しては、さらに舞曲という分野で詳しく本に書いてありますので、そちらをご参照下さればと思います。
指使いの工夫
現在の私たちは、スケールを習っておりますから、各調の運指をそれぞれ習って、それを曲に生かして演奏しています。
しかし、1700年代に活躍したチェンバリスト「ミシェル・サンーランバート」さんによれば、自由で、弾きやすくセンスが良ければいいといいつつも、推奨の指使いを残しています。
具体的には本を参照していただければいいと思いますが、ポイントがあって、それは「4つ以上の音は順番に弾かない」ことです。
あと、強拍の前で指番号が途切れたり、和声の切れ目で弾きにくい指になっていたりします。
本の中に書いてあることを簡略化して、一部紹介します。
「ドレミファソファミレド」と右手で弾くとき、
指使いは、「232323232」となるそうです。
リズムやハーモニーにも影響されると思いますので、一例だとは思いますが、
普通は、「123454321」と弾きます。
さきほどの「詩脚」を表現するためには、このような工夫をすればとってもいい表現に近づくことができそうです。
アーティキュレーションの実践
バッハが自筆記入したアーティキュレーションが多く残っており、ヒントになります。
私なりに本から読み取ったアーティキュレーションを以下に列挙します。
・跳躍はつなげない
・長いスラーがある場合、各音を不均等に演奏する(ノート・イネガールと言って、不均等奏法というのが基準だそうです)
・弱起は拍をわからせるため、いつもスタッカートで演奏する
・ハーモニーの切れ目や強調したいハーモニーの始まりの音は、前の音と離して演奏する
・曲のキャラクターを理解して、どのように演奏するかを決める
・音量の変化で表現することに頼らない
・「歌う」のではなく「語る」を意識して表現方法を探す
まだまだ足りないし、具体性に欠けますが、本の中の譜例をご覧いただければ理解できます。
まとめ
この「バッハ演奏ハンドブック」はできるだけ短く簡単に書かれています。
足りないこともたくさんありますが、基本を押さえられる、また、発展して思考できることから、おススメです。
バッハは難しい・・・
あたりまえです。だってバッハが演奏できる楽器が手元にないのですから!!
このようなことに気をつけることで、はじめてバッハの曲の良さが理解できるようになると思います。
だったら、1つからでも試してみてはいかがでしょうか??
そろそろバッハが弾きたくなってきました!!
これで終わります。
ピアノ演奏、楽しみましょう!!
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音楽理論指導や保育士試験対策も行います。詳細を知りたい方は、石山東音楽教室の西岡裕美子まで。
PROFILE
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北海道教育大学札幌校芸術文化課程音楽コース 卒業後、
札幌市南区のピアノ教室「石山東音楽教室」を開校。
現在、ピアノ講師としてお子様の指導を行うのみに限らず、
「JLCA主宰伝え方インストラクター」として活動中。
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