バッハ 平均律クラヴィーア曲集
札幌市南区芸術の森・石山東地区で、スタインウェイピアノ教室を主宰する、西岡裕美子です。
中学生の頃、ピアノの先生に突然渡された曲集。 なんだかとっても難しく見えた、この楽譜。 どうしてこんな難しい曲集をやらねばならないのだろうか。
そもそもこの聞いたことのない楽譜タイトル、「平均律クラヴィーア曲集」。
- 「平均律」って何?
- 「クラヴィーア」って何?
- エチュードなどのジャンルだと、たくさんの作曲家が曲集として作曲されているけれど、なぜバッハだけこのような曲集があるの?
- どうして一つの曲に「プレリュード」と「フーガ」という、2つの曲がセットになっているの?
- フーガがメインなのはわかるけど、何のためにプレリュードが必要なの?
- いろんなタイプの曲があるけど、どういう括りになっているの?
とっても難しくて、やるためにモチベーションが必要だった、この平均律クラヴィーア曲集。
そんな時に湧いてきていたさまざまな疑問を、今回は解決していきたいと思います。
目次
- ○ 平均律ってなに?
- ○ 「クラヴィーア」って何?
- ○ なぜバッハだけこのような曲集があるの?
- ○ どうして一つの曲に「プレリュード」と「フーガ」という、2つの曲がセットになっているの?
- ○ さいごに
平均律ってなに?
現在の調律は「平均律」で調律されています。
実は、少しずつ狂っているそうです。
狂わせているという方が正確かもしれません。
では、狂っていない調律とは何か?
それが「純正律」です。自然の音律によって調律される音程、または周波数です。
音を重ねた時、周波数の比が単純なため、純正な和音が鳴り、倍音のうなりが伴いません。
cis(ド♯)とdes(レ♭)は違う音でした。
調が変わるとき、その調の主音との関係が違うので、違う調で現在同じ音とされている上の2音は、違う音になってしまうのです。
そのため、転調のたびに、調律を変える必要があったということです。
バッハの時代あたりから、cis(ド♯)とdes(レ♭)を同じ音にするようにしていったそうです。
それで、調律し直すことなく様々な調性の演奏ができるようになったのです。
以下に純正律と平均律の違いを分かりやすく解説した動画があります。
「クラヴィーア」って何?
クラヴィーアとは、鍵盤楽器全般のことです。
バッハの生きたバロック時代には、クラヴィコード、チェンバロ、オルガンなど様々な鍵盤楽器がありました。
平均律クラヴィーア曲集の中の曲は様々なタイプの曲があり、一種類の楽器で演奏することが難しかったようです。
しかしクラヴィコード奏者、チェンバロ奏者といった区別はなく、当時の音楽家は鍵盤楽器をすべて弾きこなしていたようで、曲によって楽器を変えていたということになります。
現在それをピアノで全て演奏するということになりますので、各楽器の特徴をよくとらえていくことが必要と思われます。
クラヴィコード、チェンバロ、ポジティヴ(小型のパイプオルガン)のための曲が集まっているのが、この平均律クラヴィーア曲集だという意識を持つということです。
各楽器の特徴から、どのような曲が当てはまるのか、その特性はというと・・・
クラヴィコード・・・非常に繊細な性質、音域が狭い、速いパッセージが少ない、音楽の流れの切れ目になるような休符がない
ポジティヴ・・・和声的、長い音符が多い
チェンバロ・・・ポジティヴの逆の特徴(対旋律的、短い音符が多い)
以下で、各楽器の音色を聞くことができます。
なぜバッハだけこのような曲集があるの?
時代が時代だけに、バッハだけだったのかと思いきや・・・
バッハ以前にフィッシャーやカベソンという作曲家がオルガンのために24の練習曲を作曲しています。
しかし、歴史に残った大作品は、バッハの平均律クラヴィーア曲集が最初となったそうです。
第1巻と第2巻があり、それぞれ24調ありますので、48曲になります。
めまいでクラクラするような企画です。
様々な種類の鍵盤楽器を使用して、様々なタイプの曲を演奏する。
当時の楽器に合わせて解釈し、どのように表現するか、ということに関しても、独特の考え方が必要です。
この時代を経て、のちのクラシック音楽が広がっていくわけです。
多くの作曲家は、バッハのこの曲集から多くを学んでいる以上、私たちも後の作品を演奏するうえでは、当然知っていなければいけない作品の1つであるわけです。
バッハしか残っていないからと言って、平均律クラヴィーア曲集を演奏しなくてよいという理由にはなりません。
中学生だった過去の私に、強く言ってやりたいものです(笑)
どうして一つの曲に「プレリュード」と「フーガ」という、2つの曲がセットになっているの?
この曲集は、全ての曲が「プレリュード」と「フーガ」がセットになっています。
初めてこの曲集に出会った私は、なぜ2曲セットで練習しなければならないのか、全く意味が分かりませんでした。
練習しない生徒の言い訳のように聞こえます(笑)
実際そうだったのですが(笑)
しかし、宿題として出された以上、やらなければいけないじゃないですか。
少しでもモチベーションを上げるために、ここでわかった知識があれば、もっと楽しく譜読みできたかもしれません。
【何のためにプレリュードが必要なの? 】
プレリュードとは、古い時代からあったようです。
「プレアンブルム」といったそうです。
これは、「次の演奏の準備」という意味だそうです。
なるほど、前奏曲という日本語訳がありますが、準備曲だったということですね。
また、「演奏する作品の調や楽器のピッチに耳を慣れさせるための心の準備」でもあるそうです。
純正律になじんだ耳を平均律でその調の前に耳を慣らす、ということが、必然となってきますよね。
平均律になじんだ現在のわれわれには、当時の人々程耳になじませる必要はないのかもしれません。
しかし、だからと言ってプレリュードを弾かなくてもいいという理由にもなりません。
プレリュードを演奏してみるとわかるのですが、バッハがその調に対してどのようなイメージを抱いていたのかを強く感じます。その世界観を理解することは、時代の違う我々にとっては、当時の人とは違った、プレリュードを演奏する意味があります。
【いろんなタイプの曲があるけど、どういう括りになっているの?】
プレリュードでも、様々なタイプの曲があります。
これでは、「前奏曲って何だろう?」と思います。
先ほど書きました、プレアンブルムという古い時代からのものですが、なんと、決まった作り方があるわけではないらしいのです。
ここまでわかると、何とか納得して「プレリュードとフーガ」を演奏するという気持ちになるかと思います(笑)
さいごに
今回は、曲の具体的な内容には踏み込まず、まずは曲集そのもについて、等を書いてみました。
何度も言うようですが、難しいと思ってなかなかモチベーションが上がらなかった、中学生時代の私でした。
長年の疑問だった、しかし、最近分かりかけてきたこのような事が書いてある本に出合ったことは幸運でした。
「新版ソアレスのピアノ講座 バッハ演奏のハンドブック」(yamaha music media)という本です。
下の方にAmazonへのリンクをつけておきますので、興味のある方は開いてみてください。
もしよろしければ、ぜひこの本を手に取って、バッハの作品に思いを寄せてみてほしいと思います。
この本には、平均律クラヴィーア曲集以外の曲集や、もっと曲中の細かいアーティキュレーションなどについても、的確に記されていますので、必ず演奏のお役に立つと思います。
私もまだまだ読み込みたいです。
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音楽理論指導や保育士試験対策も行います。詳細を知りたい方は、石山東音楽教室の西岡裕美子まで。
PROFILE
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北海道教育大学札幌校芸術文化課程音楽コース 卒業後、
札幌市南区のピアノ教室「石山東音楽教室」を開校。
現在、ピアノ講師としてお子様の指導を行うのみに限らず、
「JLCA主宰伝え方インストラクター」として活動中。
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