アップライトピアノのタッチ改善法!手の負担を減らして音色をアップ
札幌市南区芸術の森・石山東地区で、スタインウェイピアノ教室を主宰する、西岡裕美子です。
今回は、多くのピアノ学習者が直面する「手の疲れ」や「思うような音が出ない」という悩みについて、具体的な改善方法をご紹介します。
正しいタッチを身につけることで、演奏の質を高めながら、手への負担を大幅に軽減することができます。
目次
- ○ なぜタッチの改善が重要なのか?
- ○ 効果的なタッチ改善のポイント
- ・1. 脱力奏法の基本
- ・2. 鍵盤との対話
- ○ 実践的なエクササイズ
- ・1. スローモーション練習(15-20分)
- ・2. 重さ移動の練習(10-15分)
- ・3. サイレント練習(5-10分)
- ○ タッチ改善に適した練習曲
- ・初級レベル
- ・中級レベル
- ・上級レベル
- ○ 年齢層・経験レベル別アドバイス
- ・子供(6-12歳)
- ・10代の学習者
- ・成人初心者
- ・経験者・復帰組
- ○ 効果的な練習のための時間配分
- ・1日の練習メニュー例(60分の場合)
- ・練習時の注意点
- ○ 期待できる効果
- ○ まとめ
なぜタッチの改善が重要なのか?
ピアノ演奏において、タッチは音色を決定する最も重要な要素の一つです。
特にアップライトピアノは、グランドピアノと異なるメカニズムを持っているため、適切なタッチ技術の習得が音色の向上に直結します。
また、誤ったタッチは以下のような問題を引き起こす可能性があります
• 手や腕の疲労や痛み:
必要以上に力を入れることで、特に手首や前腕に大きな負担がかかり、長時間の練習が困難になります。
• 望んだ音色が出せない:
力みすぎると音が硬くなり、繊細な表現が難しくなってしまいます。特にピアニッシモの演奏時に顕著です。
• 長時間の練習が困難:
不適切なフォームによる疲労の蓄積は、練習時間を制限してしまうだけでなく、怪我のリスクも高めてしまいます。
• 演奏の表現力の制限:
力んだ状態では、強弱の微妙な調整や音の粒立ちのコントロールが難しく、曲の持つ感情を十分に表現できません。
効果的なタッチ改善のポイント
1. 脱力奏法の基本
最も重要なのは、力を抜くことです。
多くの方が「しっかり押さなければ」と考えて力んでしまいますが、これは逆効果です。
以下の点に注意して練習しましょう。
• 指先は感覚器官として使う:
指先は鍵盤の感触を敏感に感じ取るためのセンサーとして考えましょう。力を入れすぎると、この繊細な感覚が失われてしまいます。
• 腕全体の重さを自然に使う:
腕の重さを効果的に使うことで、少ない力で豊かな音を出すことができます。特に低音部の演奏時には、この技術が重要です。
• 肩から指先まで、力が入っている部分がないかチェック:
演奏中も定期的に体の状態をチェックする習慣をつけましょう。特に肩や首の力みは気づきにくいものです。
• 重力を味方につけ、自然な落下運動を活用:
鍵盤を「押す」のではなく、腕の重さを「落とす」イメージで演奏することで、自然な音色が得られます。
2. 鍵盤との対話
ピアノは私たちの大切なパートナーです。
鍵盤との関係性を以下のように意識することで、より豊かな音色を引き出すことができます。
• 鍵盤の底までの深さを意識する:
各鍵盤の動きの終着点を感じ取ることで、音の芯のある響きを作ることができます。
• 打鍵時の抵抗感を丁寧に感じ取る:
鍵盤の重さや抵抗感は、音色のコントロールに直結します。この感覚を大切にしましょう。
• 各鍵盤の特性を理解する:
ピアノの高音部と低音部では、鍵盤の重さや特性が異なります。それぞれの特徴を理解し、適切なタッチで演奏することが重要です。
• タッチの強さを細かくコントロールする:
演奏表現の幅を広げるために、微妙な強さの違いを意識的に練習しましょう。
実践的なエクササイズ
以下の練習方法を日々の練習に取り入れることをお勧めします。
1. スローモーション練習(15-20分)
o ゆっくりとした動作で、力の入り具合を確認
o 一音一音、丁寧に音色を確認
o メトロノームを♩=60程度に設定し、4分音符で練習
2. 重さ移動の練習(10-15分)
o 指から指への重さの移動を意識
o スムーズな運指の実現
o 特に3-4指、4-5指の移動を丁寧に
3. サイレント練習(5-10分)
o 音を出さずに鍵盤を押す練習
o タッチの感覚を研ぎ澄ます
o 実際の演奏前のウォーミングアップとしても効果的
タッチ改善に適した練習曲
初級レベル
ブルグミュラー25の練習曲より:
o 「アラベスク」:優雅な音色と指の独立を養える
o 「真珠」:軽やかなタッチの習得に最適
o 「牧歌」:レガート奏法の基礎を学べる
中級レベル
ツェルニー30番より
o No.2:指の独立と脱力を同時に練習
o No.7:強弱の対比とタッチの変化を学べる
ショパンの前奏曲集より
o 第7番:レガートとスタッカートの対比
o 第15番「雨だれ」:一定のタッチの持続性を養える
上級レベル
リストの練習曲集より
o 「ため息」:繊細なタッチコントロール
o 「小人の踊り」:多様なタッチの使い分け
年齢層・経験レベル別アドバイス
子供(6-12歳)
練習時間:1回15-20分を1日2-3回に分けて
遊び感覚で取り入れられる練習法:
o 「ピアノでお絵かき」:鍵盤を優しくなでるように
o 「シャボン玉を割らないように」:繊細なタッチの練習
10代の学習者
練習時間:1回30-40分を1日2回程度
特に意識すべきポイント:
o 基礎練習の重要性の理解
o 無理のない練習計画の立て方
o 定期的な休憩の取り方
成人初心者
練習時間:1回20-30分を毎日
重要なポイント:
o 焦らず着実に進める
o 体の硬さに注意を払う
o 仕事の疲れを考慮した練習計画
経験者・復帰組
練習時間:状況に応じて柔軟に
アドバイス:
o 以前の感覚を徐々に取り戻す
o 基礎からの見直しを恐れない
o 新しい奏法も積極的に取り入れる
効果的な練習のための時間配分
1日の練習メニュー例(60分の場合)
1. ウォーミングアップ(10分)
o ストレッチ
o サイレント練習
o 簡単なフィンガートレーニング
2. 基礎練習(20分)
o スケール
o アルペジオ
o 上記で紹介した練習曲
3. レパートリー曲(25分)
o 新しいフレーズの練習
o 既習部分の復習
4. クールダウン(5分)
o ゆっくりとした曲の演奏
o 軽いストレッチ
練習時の注意点
• 疲れを感じたら必ず休憩を
• 水分補給を忘れずに
• 姿勢のチェックを定期的に
• 必要に応じて練習時間の調整を
期待できる効果
正しいタッチを身につけることで、以下のような効果が期待できます:
• 演奏時の疲労軽減
• より豊かな音色の表現
• スムーズな運指
• 長時間練習が可能に
• 表現力の向上
まとめ
アップライトピアノのタッチ改善は、一朝一夕には実現できません。
かく言う私も、アップライトピアノのタッチの癖が取れるまで、20年以上の歳月を費やしています。
しかし、日々の練習で意識を高め、正しい方法を継続することで、必ず効果を実感できるはずです。
手の負担を軽減しながら、より美しい音色を奏でられるよう、ぜひこれらのポイントを意識して練習してみてください。
レッスンでは、生徒さん一人一人の特性に合わせて、これらのテクニックを丁寧に指導させていただいています。
タッチでお悩みの方は、ぜひご相談ください。
PROFILE

- 石山東音楽教室 代表講師
-
北海道教育大学札幌校芸術文化課程音楽コース 卒業後、
札幌市南区のピアノ教室「石山東音楽教室」を開校。
現在、ピアノ講師としてお子様の指導を行うのみに限らず、
「JLCA主宰伝え方インストラクター」として活動中。
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