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アップライトピアノとグランドピアノのペダルの違いについて

札幌市南区芸術の森・石山東地区で、スタインウェイピアノ教室を主宰する、西岡裕美子です。

ピアノの演奏において、ペダル操作は非常に重要です。特にアップライトピアノとグランドピアノのペダルには大きな違いがあり、それぞれの特性を理解することが演奏を深めるために欠かせません。今回は、私の経験を元に、アップライトピアノとグランドピアノのペダルの違いについて詳しくご紹介します。これを知っていただくことで、演奏時のペダル操作に対する意識がより高まり、音楽表現の幅が広がることでしょう。

目次

ペダルの反応の違い:音の深みと変化

グランドピアノのペダルは、踏み込むことで音の変化が徐々に深まり、豊かな響きが広がる特徴があります。ペダルを踏み込む深さに応じて、音がどんどん変わり、微細な音のグラデーションを表現することが可能です。たとえば、グランドピアノではペダルを1から10までの段階で調整することができ、どんどん深みのある音に変化させることができます。

一方、アップライトピアノのペダルは、グランドピアノに比べてその変化の範囲が制限されています。アップライトピアノはダンパーが上がる範囲が狭いため、ペダルを踏んでも音の深みを表現するには限界があります。具体的には、アップライトピアノではペダルが1から7の段階に収束しており、その中で音が変わり始めるポイントがグランドピアノよりも遅く感じられることがあります。

このため、アップライトピアノでペダル操作を行う際は、音の変化が起こるタイミングを意識することが重要です。特に、ペダルの踏み始めや終わりのタイミングに注意を払い、繊細な音の変化を引き出せるように工夫するとよいでしょう。

ペダル操作の感覚:バネと重力の違い

アップライトピアノとグランドピアノのペダル操作におけるもう一つの大きな違いは、その「重さ」に関する点です。アップライトピアノは縦型の弦を使用しており、ダンパーを動かすためにバネを使っています。これに対し、グランドピアノは横型の弦を使用しており、ダンパーを上げる際に重力に逆らって動かします。

この構造的な違いにより、アップライトピアノのペダルは比較的軽い力で操作できるため、微細なペダル操作をスルーしてしまう危険があります。逆に、グランドピアノのペダルは踏み始めに重さを感じるため、微細な動きを探るための感覚が研ぎ澄まされやすくなります。

特にグランドピアノのペダルは、最初に踏んだときの重さが非常に大事で、その重さがペダルの初めの重要なポイントを探る手助けとなります。つまり、ペダルが少し重い方が、微細な操作をしやすくなるわけです。アップライトピアノでもこの感覚を得るためには、軽いペダル操作でも意識的に微細な動きを探ることが大切です。

個体差とメーカー差:それぞれのピアノに合った耳を持とう

アップライトピアノとグランドピアノの違いだけでなく、ペダルの感触や音の変化は、ピアノのメーカーや個体ごとに異なります。これは、ペダルの反応や音色の変化においても同じことが言えます。

たとえば、あるホールで演奏したグランドピアノでは、ペダルの踏み始めが非常に短く、すぐに過度に踏み込んでしまう感覚を覚えました。このような場合、ダンパーが弦から離れるタイミングが早く、音の変化がグラデーションを持って深くなることなく、音が急激に変わることがあります。このような個体差を理解しておくことは、ピアノに対して柔軟に対応し、良い音を引き出すためには欠かせません。

ですので、どのピアノを使うにしても、そのピアノのペダルの感覚や反応をよく聴き、意識することが重要です。ピアノの個体差に応じて微細な調整を行い、最適な演奏感を得るためには、耳を使って感覚を養うことが大切です。

まとめ

アップライトピアノとグランドピアノのペダル操作には、構造的な違い、反応の仕方、感覚的な違いがいくつもあります。グランドピアノはその広がりを持つ深みや微細な表現に優れていますが、アップライトピアノでもそれに近い表現を目指すことは可能です。重要なのは、ペダル操作における感覚をしっかりと掴み、耳を使って微細な音の変化を感じ取ることです。

また、ペダルの感覚には個体差があるため、どのピアノを使用する場合でも、そのピアノに合わせた演奏を心掛けることが大切です。アップライトピアノでもグランドピアノに迫るような表現ができるように、日々の練習と耳の使い方を意識していきましょう。