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【DIY】クルマで音楽を気持ち良い音で聴きたい!

デッドニング‗内張2

 こんにちは。札幌市南区芸術の森・石山東地区で、スタインウェイピアノ教室を主宰する、西岡裕美子の個人マネージャー西HIDEです。

 今回は音楽繋がりでちょっと変わった話題を^^;。

 クルマをお持ちの方なら、ほぼ間違いなく車内で音楽を聴かれると思います。しかし、ある程度満足できる音で聴かれている人はどれだけいるのだろうか?と考えると、その数はグッと少なくなるのでは、と想像しております。街の用品店でポン付けしたオーディオの音で、何となく満足されている人も沢山おられると思いますが、それだけではポテンシャルの半分も出せていないかもしれません。

 その原因はドアへのスピーカーの装着方法にあります。この装着方法を改善するだけで音は劇的に良くなります。細かい音、豊かな低音が聴こえるようになります。そしてクルマで音楽を聴くのがもっと楽しくなります。そこで今回は、筆者の経験談を元に劇的に音が良くなるDIYの方法をご紹介いたします。

目次

経緯・その1 大雪の出来事

 裕美子先生は、どんな雨だろうと大雪だろうと、生徒さんの都合で動かなければならない、という自営業者の宿命を背負っております。それゆえにクルマも4WDで万全を期しているつもりでした。

 ところが数年前のクリスマス、記録的な大雪に見舞われた時の事。ウチのクルマは4WDだし、普通よりは最低地上高も高めだし、問題無いでしょうと高を括って出発したら、自宅からわずか30mの場所でスタック! そのまま立ち往生してしまい、会場入りが大幅に遅れる、という大失態を犯してしまったのです。

 この一件があって、裕美子先生と色々相談してクルマを買い替える事にしました。我々の考えた要件は以下の2点です。

①どんな大雪もものともしない走破性
②石山東大人楽団の団員と機材を運べる積載性

①だけならスズキ・ジムニーという手もありました。が、団員が増えつつあるのにマイカー所有者が少ないこと、機材も運ばなければならないといった事情があり、2つの要件を満たせるクルマとして世界的に唯一無二と言われている、本格的な4WD性能を持った1BOXカーのミツビシ・デリカD5に白羽の矢が立ったのでした。

ところがこのデリカD5、オーディオの音がとても悪かったのです…。

経緯・その2 AMラジオのような出音

 購入前に試乗したデリカD5には、ディーラーオプションの立派なALPINE製のオーディオが装着されておりました。さぞや凄い音が聴けるのではとワクワクしましたが、思い切り肩透かしを食らいました。まるでAMラジオのような音だったのです。これには裕美子先生も目が点になっておりました。

 筆者はこれまでずっと某ドイツ車を乗り継いできましたが、多少の不満はありつつも、標準のオーディオでも十分に我慢できる及第点の音に慣れていました。それに電装品といえば「Made in Japanこそが至高」ということを疑っておりませんでしたから、この出来事は余計に衝撃的だったのです。

 これでは大金を払って購入しても楽しいカーライフが送れない…ということで、カロッツェリアのヘッドユニット&スピーカー、簡易タイプの音質改善キットをディーラーに持ち込んで納車前に装着してもらいました。

ところがここに大きな落とし穴が…。

経緯・その3 酷い装着状態

 納車されたデリカで、お気に入りのCDをかけてみます。TOOLの「Lateralus」。低音がズシズシ来るヘヴィなプログレメタルです。お!良い感じの音…、少しボリュームを上げてみよう…内張りの中からビビり音が頻繁にしてきます。なんじゃこりゃ…。

 どうやらスピーカーから発している振動が、ドアの内張りの中でサービスホールを塞いでいる防水ビニールに伝わって、ビビり音になっているようでした。直観的に酷い仕事をされたなと感じました。

 思いきってフロントドアの内張を剥がしてみました。直観通りでした。目に飛び込んできたのは、スピーカーとネットワークユニット(ツイーターとウーファーに音の成分を振り分ける装置)の無残な装着状態でした。

 スピーカーのフチに装着する音漏れ防止のスポンジは、所々スピーカーエッジに被るように貼られています。これでどうやってスピーカーを正しく駆動できるのでしょうか。しかも繋ぎ目の部分は少し空いてます。これでは音漏れ防止の意味が薄れてしまいます。

 もっと酷いのはネットワークユニットです。パワーウインドウのケーブルにぶら下げるような形で、無理矢理括り付けられていたのです。ただぶら下がっているだけで固定されていません。ビビり音の原因はこれでしょう。どうしてこのような取り付け方ができるのか、本当に不思議でなりません。とてもプロの仕事とは言えないでしょう。

 この件について詳しい友人に相談したところ、国産ディーラーの仕事はそんなもんだよ、との回答…。一瞬、世界に誇るモノづくり王国の日本が、こんな体たらくで良いのだろうか?と本気で思いました。さらにインターネットを検索すると、ドアの内張という見えないところを施工するので、いい加減な仕事をする業者がよくいる、有名ショップでも信頼できないところがある、といった内容の記事がポロポロとヒットします。そのような事から筆者は

・信頼できる業者が札幌にはいないかもしれない
・じゃあ自分で見様見真似でやってみよう
・工賃も取られないし一石二鳥じゃないかな

という結論に至ったのでした。

デッドニングとは?

デッドニング‗スピーカー部分

 前置きがとても長くなりました。あまりにも酷い仕事をされたので、吐き出したかったのです。ごめんなさい。

 本題です。まずはスピーカーから出てくる音について簡単な知識を。

 スピーカーは表面だけでなく、裏側からも音が発せられます。表と裏、それぞれから出た音(波動)はプラスとマイナスの関係になっており、お互いの波動がぶつかると相殺されてしまいます。理屈上は相殺されて音が消える事もありえます。ホームオーディオのスピーカーが基本的に箱型で密閉されている理由の一つは、プラスマイナスの波動が出会うのを防ぐため、とも言えるでしょう。

クルマのドアの構造

 この原則を踏まえてクルマのドアの構造を見てみましょう。上の図をご覧ください。国産車ではドアのインナーパネルにスピーカーが装着されています。そしてその上に内張(室内側のプラスチックのパネル)が被さるように装着されています。インナーパネルにはサービスホールと呼ばれる穴が沢山開いており、ウインドウを外す等のメンテナンス時は、ここから手を突っ込んで作業する訳です。通常サービスホールには雨水の侵入を防ぐため、ビニールが貼られています。

 問題なのはスピーカーをインナーパネルに装着しているこの構造です。インナーパネルにはサービスホールが開いていますから、至るところから裏側の波動が表側に回ってきます。さらにインナーパネルの上には内張が被さっていますから、表裏の波動がその中でグチャグチャに混ざる訳です。これでは良い音が出ないのは当然だと思います。

 もう一つの大きな問題として、ドア内の共振が挙げられます。スピーカーからの波動はドアパネルや内張を共振させます。これも音を濁らせたりビビり音の原因になってしまいます。

デッドニング=波動の混ざりや余計な振動を抑える事

 これらの理屈を踏まえると、スピーカーの表裏から出た波動の混ざりや、余計な振動を防ぐ事ができれば、綺麗な音が出てくるということになります。そしてクルマのデッドニングとは、この波動の混ざりや余計な振動を、防振材やスポンジ等を巧みに貼り付け養生する事によって防ぐ対策術なのです。またデッドニングを行うことにより、ドア内部がスピーカーボックスとしての役割も担えるようになるので、太い低音もしっかり出てくるようになります。

 ちなみにドイツ車の標準オーディオがそれなりの音で鳴るのは、スピーカーをインナーパネルではなく、内張の裏側に密着するように装着していること、そして鉄板が国産車に比べて厚いこと(=振動が抑えれる)が効いていると推測されます。上記した理屈を踏まえれば、理に適っていると思えます。

筆者が行ったDIY方法

 筆者は上述した情報を集めた上で、デッドニングにチャレンジしました。以下に筆者が行った手順をザックリと書きます。
※写真を撮り忘れた作業工程もありますのでご了承ください。

まずは内張剥がしから

 みんカラに載っている先人たちの情報を元に内張を剥がしました。隠しネジの場所をチェックして全部外します。次に「内張剥がし」を使って内張を外していきます。インナーパネルの間に内張剥がしを突っ込み抉ると、バコっという音と共に内張が外れます。一瞬ビビりますが、気にせずガンガン外していきます。パワーウインドウやドア灯が内張側に付いているので、接続しているカプラを外しました。

サービスホールのビニールにマジックペンでけがく

 サービスホールを覆っているビニールを剥がす前にちょっと一工夫。ビニールにマジックペンでサービスホールの形をけがきました。これは後々サービスホールを塞ぐ材料の型紙代わりにするためです。左右のどこの位置かも分かるように、その情報も書いておきました。それが終わったらビニールをけがき線の通りにカットしました。

ビニールを剥がす

 ビニールはブチルと呼ばれるネバネバしたもので接着されています。そのまま剥がそうとするとネチョーっと伸びます。なので、プラスチックのカードで少しずつノコギリの要領で切るようにしてブチルを剥がしました。それでもインナーパネルにはブチルが残ります。これはブレーキパーツクリーナーを吹きかけて、地道に欠き取りました。なかなか要領を掴めず、ここまでの作業で1日が終わってしまいました…。

鉛シートの貼り付け

デッドニング‗鉛シート

 翌日は鉛シートの貼り付けからスタートです。使ったのはオーディオテクニカの「バイブレーションコントローラー」です。アウターパネル、インナーパネルに貼って、余計な共振を抑えるものです。プロの業者さんのブログ記事を幾つか読み、気に入った方法をミックスして見様見真似で貼り付けました。スピーカーの近く、スピーカーが収まる箇所の奥、パネルをコンコンと叩いてみて響きの強いところを重点的に貼って行きます。一面にベターっと貼らずとも、この方法で十分に響きは収まりますし、鉛シートの節約にもなり一石二鳥だと思いました。しっかり貼り付けるには、ヘラを立ててゴシゴシ擦るようにすると塩梅が良いようです。

吸音材の貼り付け

 オーディオテクニカの「アブソーブウェーブ」をスピーカーが収まる箇所の奥に貼り付けました。スピーカーの裏側から出てくる波動をこれで吸音します。

サービスホールを埋める

デッドニング‗オトナシート

 ニットク「防音一番 オトナシート」を使ってサービスホールを塞ぎます。前述のけがきしてカットしたビニールをアタリにして、二回りほど大きくオトナシートをハサミで切ります。カットしたオトナシートの保護シートを剥がし、糊面をホールに当てがいます。常温ではカチカチに固くなっているこのシート。ドライヤーの熱を当てるとフニャ~としなやかになり、しかも伸びる性質があるので、パネルの形状にピッタリフィットする優れモノ。冷えればまた固くなるので、ホールを塞ぐには最適なもののように思いました。

ネットワークユニット、ケーブル類の固定

デッドニング‗ネットワーク

 ネットワークユニットは内張に干渉しないであろう位置に強力両面テープで固定。サービスホールからケーブルが出てくる部分は、オトナシートを少しカットして、その部分をアルミテープで補強。たるみ気味のケーブル類も、後々ビビり音の原因にならないようにアルミテープで固定。

デッドニング‗チューブ
ドア開閉用のケーブルはスムーズに動くのを邪魔しないように、ケーブルチューブを被せました。

スピーカーと内張の間の隙間を埋める処理

デッドニング‗スピーカーフチ

 使用したのはオーディオテクニカの「サウンドプルーフィングウェ―ブ」。スピーカーの周囲を、エッジに被らないように注意しながら囲むように貼り付けます。こうすることによってスピーカーと内張の間の隙間が埋まるので、音がドア内部に回るのを防げます。

インナーパネルと内張の隙間を埋める処理

デッドニング‗クリップダンパー

 オーディオテクニカの「クリップダンパー」、「サウンドプルーフィングウェ―ブ」、日東「エプトシーラ」を使い、インナーパネルと内張の隙間を埋める処理を行いました。

デッドニング‗内張
通常はインナーパネルにのみ行うようですが、筆者は内張の気になる箇所にもエプトシーラを貼りつけてみました。これでドアパネル全体がスピーカーを鳴らす箱になるはず…。

デッドニング‗全体
こちらが全行程が完了した状態。オトナシートの形が雑なのはご愛敬^^;

最後にドアを元通りに戻して終了です。ここまで丸二日。長かったです…。

余談ですが、筆者はデッドニングの部材をバラで集めました。しかし実際にやってみて、セットもの+追加で必要なものを買うのが良いように思いました。またデッドニングする機会があれば以下の2点を必須とし、必要に応じてエプトシーラ、アルミテープ、コードチューブ、パーツクリーナー等の補助部材を用意すると思います。参考になれば幸いです。

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いよいよデッドニング後の試聴

デッドニング‗カットオフ

 TOOLの「Lateralus」を再びかけてみます。

 おお!
 豊かな低音、キレのある高音が超クリアに聴こえてきます!
 聴こえなかった音が聴こえてきます!
 スピーカーの実力がしっかり出た、っていう感じです!

 更に、ヘッドユニットでカットオフの設定を調節してみます。これはウーファー、ツイーターをそれぞれどの帯域まで鳴らすかを調整するものです。これを使って追い込んでゆくだけで、イコライザーやラウドネスを効かせなくとも、かなりバランスの良い音が鳴ってくれました。丸二日かけて頑張った甲斐がありました。

 因みにデッドニングを施したのはフロントドアのみで、リアは標準のスピーカーのままでした。それでも2列目で聴く音の方がバランスが取れていて、とても気持ち良かったです。スピーカーからの試聴距離は程よく取った方が良いのでしょうね。

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後日談

デッドニング‗ツイーター2

 デリカD5はツイーターがサイドミラーの内側あたりについているのですが、これだと少々耳からの距離が近くやや耳障りでした。そこでスピーカーセットに付属していた部品を使って、ツイーターをAピラーに移設してみたところ、音のバランスが更に良くなりました。先人たちによれば、ツイーター、ウーファーそれぞれの視聴者までの距離を、なるべく等しくなるようにするとバランスが取れるそうで、自分で試してみてなるほどなと思いました。

 ケーブルをAピラーに回す配線は、筆者にはちょっと無理だと思ったので、友人の紹介で「Car shop pino!」さんにお願いしました。店主の今河さんは元々アウディのメカニックをされていた方です。腕が良くてとても丁寧な仕事をされます。そして温和で親切。素晴らしい人格者でした。クルマに何か施す際にはまたお世話になるつもりです。

終わりに:デッドニングを試す価値は十分にあります!

 素人の仕事としては、これで十分かなと思いました。これ以上となると、サブウーファーの追加、パワーアンプの増設、電源をバッテリー直で取る、ケーブル類のハイグレード化…とキリがありません。そこまで拘るのならば、信頼できるプロの業者さんに依頼するべきだと思います。更に走行中は車内に入ってくる騒音の問題もありますので、ここらあたりで留めておくのがよろしいのではと思いました。と言いつつサブウーファーには興味がありますが(汗)。
 それはともかく、デッドニングによる効果は間違いありません。時間を取れそうな方はチャレンジしてみてはいかがでしょうか。好きな音楽を良い音で聴ければ、もっと気持ち良く楽しめると思いますよ!

~追記~

 ちなみに達人域のプロは、各種部材の貼る量や位置等をクルマによって変えるのだそうです。パネル内の響きを殺し過ぎてもダメ、穴という穴全てを塞ぐのも正しいかというとそうでもなく、上手くバランスを取る必要があるようです。このあたりは長年の経験がモノを言う奥深さを感じさせられます。

 筆者はこういった部分に、楽器の音作りや調律に通じるものがあると思いました。当教室のスタインウェイを調律してくださっている調律師さんによれば、
「ピアノは色々な倍音が重なるからこそ豊かな音が鳴るので、それを殺してはダメ。上手く調和させればとても心地よい音を奏でられます。」
とのこと。筆者はつい先日、調律しなおされた当教室のスタインウェイの音を聴いて、なるほどなぁと納得させられました。

それではまた!